このブログの常連、「くら」君。
俺とくら君は、ある掲示板で知り合い、付き合いも5年以上となる。
ネットの付き合いだから、お互い顔は知らないけど、なんとなく他人じゃないような気がしてきた。
それというのも、彼は現在19歳だが、彼が中学〜大学にかけての成長を、彼の文字を通して見ていたからである。
しかし、それでも俺の中で「くら」という人物は現実感のない、揺らいだ存在である。
インターネットの掲示板に書かれている「くら」は、今現在、実態を持ってこの現実にただ一人存在している、と誰が分かろう。
その実態が幾人もいたり、現実の知り合いが、長い間「くら」になりすましているだけなのかもしれない。
あるいは、SFすぎるかもしれないが、仮想現実に生きるヴァーチャルな人工知能かもしれない。
あるきっかけで彼の携帯のメールアドレスを入手し、メールのやり取りもあったが、
それでも俺は、信じられなかった。マトリックスに出てくる、エージェントのように、「くら」は人間を侮蔑した、機械野郎なのかもしれない。
その機械野郎から、今日、俺の携帯にメールが入った。
なんでも、暇なので俺のバイト先の漫画喫茶に来たい、というのだ。
ちなみに、機械野郎は俺と電車二、三駅ぐらいのところに住んでいるらしい。
本人には、俺のバイト先で働きたい意思もあったし、否定する意味も無い。
俺はバイトに入る時間帯と、外見の特徴を伝え、それから「来れば」と半ば挑戦的にメールを出した。
会っても、ろくに話もできないが、それはそれで面白い。
バイトに入り、いよいよ彼を待つことに。
聞いていた彼の服装は、上はジャケットと下は軍パン。
平日の夕方で、客が少なく、来店すればまず間違いなく分かる。
俺は暇を持て余し、ビニール袋をたたんだり、意味もなく机を拭いていたりしていた。
と、その時、背の高い、聞いていた外見通りの人物がぬっと現れた。
彼は目線をどこに合わせればいいか分からず、レジにゆっくり歩み寄った。
俺はまだレジを触らせてもらえないので、見守るしかない。
彼は担当者の説明をただ、聞いていた。その時、俺に気付いたのかも怪しい。
俺はたまらなくなり、その場を離れ、箒と塵取りを持って階段に向かった。
彼から逃げたわけではない。一方的に彼を把握した俺は、(おそらく)俺にきづいてないだろう彼を、別の角度から一方的に楽しもうというわけだ。
斜め上から見た彼は、なんとなく笑えた。
彼は会員登録などの手続きをすませ、個室に入った。
あとで彼から、俺の携帯に部屋番号を教える旨のメールが届いたが、
実はそんなものは必要なく、レジのパソコンで誰がどの席に座ってるか分かるのである。(モニターに部屋番号と名前が表示されている。ちなみに「くら」の本名は以前から知っている)
俺は、「くら」と直接会話して、実態を確かめるために、誘われようが誘われまいが、彼の部屋に行くことは予め決めていたのだ。
「47」
無機質な部屋の前にたち、息を殺してノックした。
機械野郎か、あるいは化生の者か。
俺は震える手で扉を開けた。
(以下、会話のやり取りを脚色なく寸分違わず載せます。)
俺「ハジメマシテ」
(くらは笑っている)
(俺はそこでわざと立ち去ろうと扉を閉めて、また開ける。しかし、くらは理解不能。)
アニヤ「今日はヤバイよ。」
くら「今日は(面接)無理?」
アニヤ「ヤバイ。それじゃ仕事あるんで」
(俺は扉を閉める)
この間、僅か、20秒。初対面に感動も糞も無い。
実際、面とむかうと照れる。
ただ、あの数十秒のやり取りで、通じた気がする。
「くら」の笑顔を見たとき、俺はそれで十分だと思った。
ところで、「くら」が人間かどうかについてだが、それは確かめようがない。
だから、彼の実態が人造人間シリーズ、あるいは仮面ライダーなんとか、もしくはタキシード仮面だとしても依然、不思議はないのである。
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