一言
2007.11.25(Sun)

村山由佳の「おいしいコーヒーの入れ方」を読んでこんな恋愛ができたらいいのに、と憧れていた時期が自分にあったことがおぞましい。

 ブログランキング・にほんブログ村へ  テキスト職人 0574Ranking


// 04:41 // 私の過去 // Trackback(0) // Comment(0)
 駆け抜けて青春
2007.11.08(Thu)

昨日、駅前で女子大生風の二人がにニコニコしながらチラシを手渡してきたので、思わず受け取ると、そこには名前も聞いたことの無いような大学の学祭の案内が書いてあった。
そうか、もう学祭のシーズンなのか、と思うと同時に自分が大学生であるという設定を思いだした。
おそらくうちの大学にも学祭はあるだろうが、自分にはもともと、サークル活動といった共同体に属して何か打ち込む気概もないし
「祭」と名のつく物は避けてきた人間だ。まして、祭のシーズンが来るたびに、年中儀式や祭をやってる土民と比較して「俺はより進んだ文明人である」と自分に言い聞かせてきたぐらいだ。

しかし、いくら俺が一歩先を行く文明人だとしても、時には土民の生活に憧れてしまう。
仲間と共に安っぽい食べ物を売ったり、お化け屋敷でこんにゃくを吊るす演出をしたり、新聞の切り抜きを張っただけのクソみたいな研究を展示したり・・・何でもいいからとにかく雰囲気を味わいたい。そしてたまには交尾を匂わす人間の姿をした雌猿共と獣のように戯れたい…。

思えば高校の時の苦い思い出が、こういった幻想を産み出しているのだろう。
俺は生まれて此の方、文化祭というものをまともに経験していない。
参加しなかったのは自分の意思もあったが、高校のシステムが俺を拒絶したからだ。

当時、俺の通っていた高校は、部活単位で行事をする奇妙な形式をとっていた。例えば体育祭は部活単位で紅白に分けて競いあう。文化祭もその例に倣い、部ごとで出し物をした。
しかしそういった形式が可能なのは校則である「部活の強制参加」という効力が存分に発揮されなければならない。俺のような部に籍を置くだけの怠け者は一切関わることができなかった。


ここまで聞けば、当日参加しなければいいだけの話だが、うちの高校は午前だけ授業をしてから学祭の準備を行う、準備期間というやっかいなものが存在した。
その期間はいかなる生徒も通常の授業終了時刻になるまで外に出ることが許されなかった。例えば何か買出しに行く場合、担当の教員に許可証を貰い、校門で検閲を行ってからようやく外出でき、また例え作業が早く終わっていても、校庭の草むしり等、他の作業に回されるので誰一人としてフケることができなかったのである。(というより、うちの高校は進学校だったせいか、真面目な生徒が多かったので、そんなことを思いつきもしなかっただろう。)
よって事実上、学校は牢獄に等しかった。

俺は例によって幽霊部員だったので、その日は午前の授業だけでて後は帰宅するだけだった。
実際、教員の目を盗んで、校門ではない別の場所から外に出ればいいだけの話だが、一つ問題があった。今朝、チャリを駐輪場にとめていたのだ。

チャリに乗ったまま(もしくは引いたまま)、校門以外から抜けられる道はない。あるいはチャリを置いていくか。しかし片道30分のチャリ通学、歩きで下山(高校は山の上にあった)するのは肉体的にきつすぎる。
もはや脱出は絶望的になり、駐輪場に止めてある鉄の塊を呪った。

何か突破口となるものはないか。俺は現場の状況を把握するために校門を見に行った。
すると教員が二人体制でしっかりと出口を固めていたが、完全に門を塞いでいるわけではなかった。教師は門を挟んで立っていたので、2メートルほどの間隔が空いていたのだ。

「これはもう、強行突破しかねぇ!」

俺は急いで駐輪場に行き、チャリに跨り走り出すと、検閲する教員を横目に校門を突き抜けた。







教員は驚き、唖然としていた。
謎の生徒が「大脱走」のマックィーンのように自転車を操り、荒々しく煙を立てて走り去ったのだから。
後ろで何か言う声が聞こえたが構わなかった。
下り坂を一気に駆け降り、追っ手が来ない事を知ると、後ろを振り返り「あばよ」と言って俺は空っぽの青春を駆け抜けた。


ブログランキング・にほんブログ村へ  テキスト職人 0574Ranking

// 02:03 // 私の過去 // Trackback(0) // Comment(6)
 サンディ
2007.08.30(Thu)

小学校の同級生で、ペルー出身の肌の黒い、太った女がいた。

名はサンディ

皆は「サンディさん」と呼んでいたから、彼女の本名は誰も知らなかった。

連絡簿にもサンディとしか書いてなかった気がする。


ある時、彼女は別れも告げずに帰国し、一年後またフラリと戻るとにわかに時の人となった。

「あの黒豚が帰ってきやがった」

馬鹿だった俺は、わざわざ隣のクラスまで見に行った程である。

それを機に、友人間でサンディの本名が噂されるようになり、彼女を

サンディ・ハラミヲ・田中

と呼んだ。

しかし本人に確認したわけでもないし、あだ名をつけているような
ものだった。


中学にあがると、サンディは激ヤセし、自信を得たのかギャル気取りで校内を歩いていた。

そしてその同時期に

サンディ・ハラミヲ・ゴンザレス・パオラ・田中

と、俺らに呼ばれるようになった。

誰が付けたのか、あるいは本名かもしれないが、

「あいつの名前なんだっけ?」

と振っては笑い転げた。


予断だが、サンディの兄貴は地元でも相当なワルだった。

名は「マルコ」と言うのだが、市内のワルの間では恐れられていた。

ちなみに俺の友人は、ワゴンに乗った兄貴に拉致されかけ、妹と同じ学級という事で解放された。


最終的には

サンディ・ハラミヲ・ゴンザレス・パオラ・田中.com(ドットコム)

で落ち着いた。ドメイン名まで与えられたので、随分出世したものだ。



やがて中学を卒業すると、皆散り散りになった。

一体サンディの本名は何だったのか。

今となっては知る由もなく、地元の永遠のミステリーとしてこれからも語り継がれていくだろう。


ブログランキング・にほんブログ村へ  テキスト職人 0574Ranking

// 02:31 // 私の過去 // Trackback(0) // Comment(3)
 闘球児
2007.06.06(Wed)

高校の時の球技大会で、ドッジボールに無理やり狩り出されたときのことである。
やる気はなかったが、その場から逃げ出すことも出来ない臆病だった俺は、学校の行事に一生徒として受動的に参加していた。

大抵、運動のできる奴らはサッカーとかソフトボールやバスケに参加していたので、ドッジボールのメンバーはたかが知れていた。
その予想通り、始まる10分前になると運動系のイベントでは活躍の見込みのない奴らが、ぞろぞろ集まってきた。
俺は集まった弱者を見ると、とりあえず安心した。とっとと終わりにして早く帰りたかったからだ。

いざ試合が始まってみると、一回戦目は快勝した。
会話もしたことのない連中で、およそチームワークというものは持ち合わせていなかったが、それでも他の出場者よりも運動面で強かったようで、投げた球はことごとく相手に当たった。
俺も小学校の頃にドッジボール大会に何度も出ていたので、それなりに活躍した。
一汗かき、結果に満足したのか、俺は次の対戦が少し楽しみになった。

そして次の試合。
相手は、全員が女性で編成されているチームだった。
ここにきて、ドッジボールの認識の薄さが形になって現れ、チーム全体に暗い影を落としたように見えた。
俺はなんだか情けなくなり、曲がった白線で引かれた狭いコートの上で、涙が出そうになった。

相手の女達は、運動音痴を演出しており、二人・三人単位でコートの隅に固まっていた。
その中の、運動部っぽいのがコートの真ん中に進み出てきた。
審判がボールを空中に投げると、なんなく俺のチームメイトはボールをキャッチした。
彼は、女相手に本気で投げるのは紳士ではないと思ったのだろうか、前回とはうってかわって、弱弱しく相手のコートに投げた。

そのボールは弱い小動物を装った女にあっさりキャッチされた。というのも、その女は色黒で俺と大して変わらぬ体格の持ち主であった。
コートの外にいる女の友人達に、「○○がんばれー!」と応援され、ボールを持った女は砲丸投げのようにボールを投げた。
俺はあっさりキャッチされると思って飛んでいった先を見ると、考えられないことが起こった。
受け手の男は、一度持ったボールをワザと放したのである。

「きゃあ☆やったぁ!」

固まった女が歓声を上げると、場外の女もそれに合わせて歓声を上げた。
男は無表情な顔をして、外野へと向かった。変な優しさを見せた男の後姿は、家庭を持ちながら帰る場所がない、情けない中年のおっさんのようだった。

こうして同じような輩が続出し、女の悲鳴にも似た歓声が場内で沸いていた。
コート内外は異様な盛り上がりを見せており、スポーツというより、おもしろい見世物のようであった。
それに圧されたのか意思の弱い、軟弱な男は散っていった。

試合開始から十分程経過したが、その時にはもう自分のコートには俺を含めて3人しかいなかった。
考えてみれば、トーナメント方式の二回戦目だから、相手は前回の試合に勝っていることになる。
おそらく、相手はわざと負けたのだろう。このままでは俺らもその結果を辿ることになる。

ふと俺の目の前に、落下しないのが不思議なほど遅いボールが飛んできた。
俺はそれを反射的に掴んだ。
あぁ、俺が投げるのか、と思いだし、ゆっくり前方に進み出た。
目の前には、何の屈託もないような顔つきの女、笑いながらそれを見てるクラスメイトの男が見えた。

一体俺らは何のためにこうしてコートの上で立っているんだ。

俺は残った奴らに言いたかった。

「所詮、大人しい奴の優しさなんて、ただ意思が弱いだけで、自分が思ってるほどいいもんじゃない。

周りの見世物になっても気がつかないなんて、お前ら、どこまでお人好しなんだよ…。」



俺はボールを持った右腕の緩めた筋力を、最大限に引き伸ばした。



「茶番は終わりだ。」



俺のボールは、女達が今までに見た事の無いような速度で飛んでいき、その破壊力は女三人を道連れにした。

場内は静まり返った。皆は、理解できないことが起こった時に見せる、強ばった表情を浮かべていた。

近くにいた女は、こぼれたボールを拾い上げた。そして周りの女に

「がんばれー」

と励まされ、俺に向かって投げた。その時俺は、完全に悪者だった。


俺はそれをなんなくキャッチすると、思いっきり投げたが、ボールは当たらずに外野へ飛んでいった。
女は得たいの知れない者を見るような目つきで俺を見ていた。

外野で受け取った男は一瞬とまどい、ボールを手で弄んだ。
気のせいだったかもしれないが、その時、一秒が一分ぐらいに感じた。
彼はやがて、自身の人生に反旗を翻すかのように、全力で投げた。

こうして女は駆逐され、茶番は終わった。試合を見ていた者は興ざめして、ほとんどがいなくなっていた。

結局、その次の試合であっさり負けたが、良質なハリウッド映画を観た後のように、晴れた気分であった。
しかし登場人物が浮かばれる様なハッピーエンドでもなく、変化したように見えたチームメイトも翌日には何事も無かったように、黙々と授業を受けていた。


ブログランキング・にほんブログ村へ  テキスト職人 0574Ranking

// 03:12 // 私の過去 // Trackback(0) // Comment(3)
 眼鏡萌え
2007.04.05(Thu)





あなたを時に知的に、オシャレに飾るメガネ。

今回はそんなメガネの小話を紹介したいと思います。



・大沼君

小学生の頃、大沼という坊主のおっさんみたいな奴がいた。
坊主頭に眼鏡という組み合わせで、近くのドブ川で釣りばっかしていた。
ラーメン屋の息子でもあり、その気質もあるのか、ある日女子にからかわれると、彼女の筆箱を床に叩きつけて破壊した。彼は女にも容赦しなかった。
そんなだから、当時、「異常者」の名を欲しいままにしていた。

高校に上がったある日、懐かしさに小学校の卒業アルバムを捲ると衝撃の写真を目にする。
俺が目に止まったのは彼だった。なんと彼の眼鏡が片側にズレ落ちていたのだ。
なんの変哲もないいたって普通の卒業アルバムに、その間抜け面が光り、中年のシュールなユーモアを感じさせた。
俺はしばらく腹を抱えて笑い、近くにいた友人に見せると、さらに驚くべき事実を耳にした。

「一緒のクラスだったから覚えているよ。奴の眼鏡は写真撮影の前日に、軸のネジが外れて、仕方なく連結部を釣り糸でフレームと巻きつけたらしい。それでもやはり安定しなかったから、ズレ落ちたんだろうよ。」

眼鏡屋に行かず、釣り糸でなんとかなる、と考えるあたりが俗人とは違う。
やはり彼は偉人だとつくづく思うのであった。




・グラサン売り場

今から一週間前の話。地元の友人が、東京で服を買いたいらしく、俺は案内を頼まれた。
それなら原宿辺りが適当だと思い、大衆向けの古着屋に行った。

店内は、春休みの高校生やら大学生で一杯で、人と接触しなければ通行もできないありさまだった。
俺は、特に欲しい物がなかったので、一人でちゃちいグラサン売り場で、買う気もないのにかけて遊んでいた。
やがて飽きて、売り場を離れようとすると、グラサンが一つ床に落ちていた。
俺が落としたのではないが、あまりに人が多く、踏まれる恐れがあったので俺はつまみあげて売り場に戻しておいた。
それから、店の外に出て友人を待った。


しばらくすると、友人は満足したらしく、笑顔で外にでてきた。
俺は買った物を尋ねていると、彼は突然、慌ただしく買い物袋をあさって

「やべぇ、俺のメガネがない」と叫んだ。

彼の顔を見るとグラサンをしているので、それはどうしたのかと尋ねると、今買ったばかりのものらしい。
それを聞くと、俺は売り場に戻したグラサンを急に思い出した。
しっかりフレームのあるオシャレな感じだったので、何の疑いもなくグラサン売り場に戻したが…。
俺はそのことを言うと、彼は、貰いもんだし、度が入ってないからどうでもいいと言った。
店内のグラサンはもともと名札が張られていないので、今頃、それを手に取った若者が平然とレジに並んでいるかもしれない。


「だったら金払うことなかったな」


俺はそういうと、彼も可笑しくなったのか、新しくなったメガネを手に取り、吹き出したのであった。




// 23:28 // 私の過去 // Trackback(0) // Comment(9)
| ホーム |